昨日の夜、失踪騒ぎを起こした弟は、結局眠ることができ
なかったらしく、赤い目を擦りながらやってきた。
朝からどこかに電話を掛けていたみたいだと、母親からは
聞いている。
そろそろ出掛けようかと思っていた照弘は、いったい何を
していたのかを問い質してみた。
すると、
「……星をみていたんです」
弟は、言い訳のようにそう言った。
(星、ねえ……)
そんな趣味があるとは初耳だったが、
「なあ。なら今夜、星を見にでかけないか。きっと今なら
白鳥座が見える」
意地悪な意味でなく、気分転換にでもなればと誘ってみた。
「特別な星座ですか?」
「デネブっていう有名な星を持っていてな、北十字星、ノーザン
クロスと呼ばれることもあるんだ」
「ノーザン……クロス……」
「もしほんとに行くんだったら、今日はたっぷり昼寝しとけよ」
「……わかりました」
出掛ける間際、義明に星座の本を手渡してやると、嬉しそうに
持って行った。
「照弘」
玄関で靴を履く照弘に、母親が声をかけてくる。
「ありがとう」
照れ隠しに肩をすくめて、
「星が好きだったとは、知りませんでしたね
と返した。
すると母は、
「ロマンチストなのよ、義明は。私に似たんですねえ、きっと」
などと言ってくる。
「はいはい」
心配性のくせにとぼけているところなどは、むしろ自分の方が
母に似てるだろうに。
そう思いながら、照弘は苦笑いで家を出た。
なかったらしく、赤い目を擦りながらやってきた。
朝からどこかに電話を掛けていたみたいだと、母親からは
聞いている。
そろそろ出掛けようかと思っていた照弘は、いったい何を
していたのかを問い質してみた。
すると、
「……星をみていたんです」
弟は、言い訳のようにそう言った。
(星、ねえ……)
そんな趣味があるとは初耳だったが、
「なあ。なら今夜、星を見にでかけないか。きっと今なら
白鳥座が見える」
意地悪な意味でなく、気分転換にでもなればと誘ってみた。
「特別な星座ですか?」
「デネブっていう有名な星を持っていてな、北十字星、ノーザン
クロスと呼ばれることもあるんだ」
「ノーザン……クロス……」
「もしほんとに行くんだったら、今日はたっぷり昼寝しとけよ」
「……わかりました」
出掛ける間際、義明に星座の本を手渡してやると、嬉しそうに
持って行った。
「照弘」
玄関で靴を履く照弘に、母親が声をかけてくる。
「ありがとう」
照れ隠しに肩をすくめて、
「星が好きだったとは、知りませんでしたね
と返した。
すると母は、
「ロマンチストなのよ、義明は。私に似たんですねえ、きっと」
などと言ってくる。
「はいはい」
心配性のくせにとぼけているところなどは、むしろ自分の方が
母に似てるだろうに。
そう思いながら、照弘は苦笑いで家を出た。
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