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『 二十三日 2/3 』≪≪    ≫≫『 雨 3/3 』   
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 7月も、あと一週間もすれば終わってしまう。
 夜半過ぎ、眠ったはずの三男が床にいないことに気付いたのは夫だった。
 世の小学生ならばこの時期、始まったばかりの夏休みにわくわくして
眠れないこともあるかもしれない。
 けれど息子に限ってはそんなはずもなく、慌てて長男を叩き起こして
夫とともに家中を捜しまわってみたが、見つからない。
 すぐにでも警察に、と思って受話器を取ったのだが、
「いや、少し待ってみよう」
 夫はあくまでも悠長だ。
 だから、抗議のつもりで家の外を見てくるからと玄関を飛び出した。
 とそこで、境内の片隅の人影らしきものが目に入る。
 パジャマ姿のままで佇む、三男・義明だった。
 心の底から安堵したせいか、見つかったら厳しく叱りつけようと思って
いた気持ちも、ため息とともにどこかへ消えてしまう。
 空を見上げる後ろ姿をまじまじと見つめて、以前よりも身体つきがしっかり
としてきたことに気付いた。
 来年はもう6年生だ。
 背丈も今年に入ってからぐんと伸びたせいで、今にも自分を追い越しそうだ。
「何か見えますか?」
───お母さん」
 それでも、振り返った表情は未だ子供のものだった。
「誰かに……呼ばれたような気がしたんです」
 そう言って、また空を見上げてしまう。
 それは所謂幽霊の類だろうか?
 この三男は特にそういった力が強いらしく、夫がいつも感心している。
「お父さんを呼びましょうか」
「いえ、そういうんじゃなくて………」
 息子は、何かを散々迷った後で、
「すみません、少しだけ独りにしてもらえますか」
と言った。
 仕方なく、きちんと床につく約束だけを取り付けて、夫のところへ報告に戻る。
「気が済んだら戻ると言っているんだろう?なら、放っといてやろう」
 そうは言われても、やっぱり心配でしょうがない。
 自分の部屋へと戻っていく長男を横目で見ながら落ち着かないでいると、
叱られてしまった。
「義明を信じなさい」
 もちろん、信じてはいる。けれど……。
「身体こそ大きくなりましたけど、まだまだ子供としか思えません」
 すると夫は、
「それはそうだ」
と頷きながら、
「私達は親なんだから。私達にとって、義明は一生子供のままだ」
 笑ってそう言った。
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