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  そうかそうか、わかりもうした。
  ………いやいや、せっかくの休みなのに申し訳ないことで……
  ……ええ、ええ……はいはい、じゃあまた
 国領慶之助は受話器を置いた。
 電話は永末佐和子からだった。
 大型連休を利用して仰木美弥が仙台へ来る予定だから、ふたりで寺を手伝いに来るという。
 国領はいま、APCDに罹ったために居場所を失った人々の面倒を、無償でみている。
 連合いが亡くなってから、ガランとしてすっかり寂しくなったこの寺も、ずいぶんとにぎやかになった。
 とはいえ、住み込みのボランティア2名とともに少ない寄付金の中でやりくりしていくのはたやすいことではない。
 再度、電話が鳴った。
 電子パネルには「赤鯨衆 仙台支部」の文字が光る。
 "赤鯨衆"はAPCD患者達の支援団体としては先駆け的存在で、その名も今や全国区だ。
 国領に対しても何度か援助の話があったが、その度に断ってきた。
 この組織のトップが400年前の怨霊だということを知っている国領には、現代人としての意地のようなものがあったからだ。
 けれど今、自分の心に生じる迷いをどうにも出来ないでいた。
 この先自分に万が一のことがあれば、すぐにでもこの寺は立ち行かなくなるだろう。
 そうなる前に、しっかりとした組織の一部に組み込んでもらえば、少なくともここにいる者たちは困らなくてすむのではないか。
 そんな風に考えるのも、歳を取った証拠だろうか……。
 鳴り止まない電話を前に、国領は立ち尽くすしかなかった。
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