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『 バレンタイン 3/5 』≪≪    ≫≫『 バレンタイン 1/5 』   
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「あれ?森野さん?」
(ひいいいいっ!)
 成田家のポストの前で、沙織は頬を引き攣らせた。
(黙ってポストに入れて帰ろうと思ったのに!!)
 だからわざわざ学校では渡さなかったというのに、タイミング良く(いや悪く?)、譲
が玄関から出てきてしまったのだ。
 手にしていたチョコはあまりにも大きいから隠すこともできず、
「あの……これ……」
とおそるおそる差し出すと、
「おれに?ありがとう」
 譲は天使のほほえみで受け取ってくれた。
 その笑顔に若干のぼせつつ、譲がどこかへ出掛ける格好であることに気付く。
(まさか、女の子と会うとかっ?)
「どっ、どこかでかけるところ?」
「うん、高耶のところ。今日は家にいるはずなのに学校来なかったから、様子見に行こう
かと思って」
「ああ、そっか……」
 このところ、仰木高耶は殆ど学校に姿を見せない。
 詳しい事情は知らないが、たぶん例の幽霊退治絡みだ。
「あ、じゃあこれ、仰木くんに渡しといてもらえるかなあ?」
 クラスメイト用の義理チョコを、一応高耶の分も用意しておいたのだ。
 譲のものと比べるとかなり見劣りはするが、きちんと手作りしたものだから心はこもっ
ている。
「高耶に?……ねえ、それなら一緒に行かない?」
「え!?」
「あいつ、きっと喜ぶと思うよ?」
「ええ?そうかなあ………」
 正直、仏頂面しか思い浮かばなかったが、譲と一緒にいられるのならそれはうれしい。
「じゃあ、行っちゃおうかなっ」
 沙織は精一杯の笑顔で譲に笑いかけた。
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