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『 バレンタイン 2/5 』≪≪    ≫≫『 カウントダウン 3/3 』   
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「はい、おにーちゃん」
「サンキュ」
 毎年恒例、美弥からの手作りチョコレートを受け取って、高耶は礼を言った。
 昨晩、遅くまで台所でバタバタやっていたのを知っていたから、お疲れさま、とも言っ
てやる。
 テーブルの上には同じ包みがもうひとつ。
「お父さんは帰ってきてから食べるって」
「ふうん。………じゃあ、あれは誰にだよ」
 リビングのソファに置かれた美弥の通学カバンの横に、高耶が貰ったものよりひとまわ
り大きい、しかもかなり気合の入ったラッピングのものが置かれていた。
「へへ、内緒」
「オレもそっちがいいな」
「中身は一緒だもん」
 美弥はそれを大事そうに鞄にしまうと、
「じゃあいってきます!」
と元気よく言って家を出て行った。
 ひとりになった部屋で、高耶は小さくため息をつく。
 美弥はもう、朝、遅刻するよと高耶を起こすことはしなくなった。
 暗示がよく効いているらしく、この時間になっても高耶が登校の支度をしていないこと
に疑問すら抱かないようだ。
 とはいえ、今日は別に調伏旅行へ行く予定がある訳ではない。
 本来ならきちんと登校すべきなんだろうが、
(行く気がしない)
 今更あの退屈な授業を受けて、何になるというのだろう。バレンタインではしゃぐクラ
スメイトたちと顔を合わせたところで、気まずいだけだ。
(ひとりでいるのが一番楽だ)
 もう誰かの顔色を見て気を揉んだりするのは疲れた。
 心の底からそう思った。
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