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『 バレンタイン 5/5 』≪≪    ≫≫『 バレンタイン 3/5 』   
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「こっちこっち!」
「なあにやってんだよ、お前ら」
「景虎ってばオレンジジュースしか飲まないんだもん」
 急に綾子に呼び出された千秋は、面白くもなさそうな顔で座る高耶の前に置かれたチョ
コレートに目をとめた。
「おーお、いっちょまえにチョコなんか。収穫はいくつよ?」
「みっつ」
「けっ、しけてんな」
「そういうあんたは?」
───ん?」
「しけてるわねえ~。あ、板チョコでも買ってきてあげようか?」
「いらねーよ」
「………じゃあ、オレは帰るから」
「なにぃ?!」
 目をむいた千秋には目もくれずに、高耶はさっさと帰っていった。
「何だよ、あいつ」
「私たちとじゃ、もう打ち解けて話したり出来ないのよ」
 綾子は憂鬱そうな顔で言った。
「様子見に来たつもりだったに、逆にこっちが心配されちゃったわ」
 それはまるで、上司として部下に接する態度だった。
 しかもそれを当たり前だと思ってやっているのか、強がってやっているのか、綾子には
判断すらつかなかったのだ。前生以前の景虎のように、高耶は最近、人に心を読ませなく
なった。
「そんなの、強がりに決まってんだろ」
 記憶を取り戻したからといって、精神年齢が飛躍的に上がるとは思えない、と千秋は言
う。
 部下の前で、よきリーダーであろうと必死なはずだ。
「そうよね………」
 だとしてもきっと、自分達には何かをしてやることは出来ないのだろう。
 きっと高耶もそんなことは望んでいないはず。
「……あーあ、呑まなきゃやってらんねーなっ」
 千秋はバサッとメニューを開くと、通りがかった店員を呼び止めた。
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