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『 紅葉 3/3 』≪≪    ≫≫『 紅葉 1/3 』   
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「誰だよっ!三人でかかれば訳ないとか言ったやつっ!」
涙声でそう言いながら去っていく他校の上級生たちに、それでも年上か、と情けない気分になる。
あがる息を整えようと、大きな木の根元に足を投げ出して座った。
上から、落ち葉がはらはらと降って来る。
尻の下にも葉がこんもりと積っていて、いいクッションになっている。
その赤い葉に、赤い血が垂れた。
相手の顔を殴った時に切ったらしく、手から血が溢れだしていた。
汚れた血。
酒を飲んでは子供を殴る男の血と、子供を捨てても平気でいられる女の血。
手に口をつけて、その血を吸った。


いつまで、自分は孤独なままなのだろう。
最近よく、考える。
もしかしたら一生、自分は孤独なままなのではないだろうか。
アル中の父親はきっと病気で早死にするだろうし、その方が世の為人の為だ。
そしたら自分が美弥をきちんと大学まで送ってやりたい。
けれどいずれは結婚して、家を出て行ってしまうだろう。
その時自分は?
美弥以外の誰かに、必要とされる存在になっているのだろうか。
美弥以外の誰かを、必要な存在だと想うようになっているのだろうか。
さっさと大人になりたいけれど、大人になるのはとても怖い。
大きく、風が吹いた。
真上を見上げると、赤や朱や黄の色をした葉が、ガサガサと音を立てている。
自分と同じだ、と思った。
彼らはきっと今、生まれ育った樹から旅立つことへの不安で、胸がいっぱいに違いない。
再び吹いた風の冷たさと、自分を待ち受ける暗い未来への不安で、身体の震えが止まらなかった。
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