月が……
乱れる息の中、高耶が必死に空に向かって手を伸ばす。
男は顔を上げた。
月が……いな……
四国の空を雲が覆ってからもうかなりが経つ。
あんなもの、あったってなんの役にも立たない
オレを……呼んでる……
呼んでなんかいない
ないて……る……
長く伸びる高耶の手を、力ずくで自分の胸に抱え込んだ。
月はもう二度と現れない
な……んで……
俺が隠したから
どう……し…
あなたの名前を呼ぶのは俺だけでいい
………
あなたを思って泣くのは俺だけでいい
高耶は視線を目の前の男へと移した。
なおえ……
その名を呼んで、静かに眼を閉じた。
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