その日の夕焼けは、桜の色に似ていた。
「おい、きいてんのか」
「……ああ」
とは言うものの、明らかに上の空だ。
直江の視線の先を辿っていくと、空と同じ色の花びらを散らす樹があった。
再び直江を振り返ってみると、表情はとても穏やかだ。
伊勢にある、あの若木のことを想っているのか、あるいは桜にまつわる思い出でも、思い返しているのか。
仕方なく長秀は、話題を別に移す。
「同じ植物同士ってのは意思疎通が図れるらしいぜ」
「土中を伝ってか」
「いんや、空気中に化学物質を放出するらしい」
直江は初耳だという顔をした。
「こんだけ桜ばっかりの国なら、桜ネットワークは最強だろうな」
長秀が、そこここに桜たちの発信した秘密の暗号文が飛び交っているような気分になっていると、直江がふらりと歩き始めた。
「おい」
「先に行っててくれ」
まるでその暗号文を受信したかのように、そちらの方向に歩いていく。
「……ったあく」
でも、直江くらいになれば、桜と話が出来てもおかしくないとも思えた。
この時期の直江は使い物にならないと、仲間内でもよく言っている。
ふとした拍子に、心がどこかへトリップしてしまうのだ。
(まあいいさ、桜が散るまでの間だ)
頼もしいはずの総大将の背中を見送りながら、長秀もなんとなく、元総大将の姿を脳裏に思い描いていた。
「おい、きいてんのか」
「……ああ」
とは言うものの、明らかに上の空だ。
直江の視線の先を辿っていくと、空と同じ色の花びらを散らす樹があった。
再び直江を振り返ってみると、表情はとても穏やかだ。
伊勢にある、あの若木のことを想っているのか、あるいは桜にまつわる思い出でも、思い返しているのか。
仕方なく長秀は、話題を別に移す。
「同じ植物同士ってのは意思疎通が図れるらしいぜ」
「土中を伝ってか」
「いんや、空気中に化学物質を放出するらしい」
直江は初耳だという顔をした。
「こんだけ桜ばっかりの国なら、桜ネットワークは最強だろうな」
長秀が、そこここに桜たちの発信した秘密の暗号文が飛び交っているような気分になっていると、直江がふらりと歩き始めた。
「おい」
「先に行っててくれ」
まるでその暗号文を受信したかのように、そちらの方向に歩いていく。
「……ったあく」
でも、直江くらいになれば、桜と話が出来てもおかしくないとも思えた。
この時期の直江は使い物にならないと、仲間内でもよく言っている。
ふとした拍子に、心がどこかへトリップしてしまうのだ。
(まあいいさ、桜が散るまでの間だ)
頼もしいはずの総大将の背中を見送りながら、長秀もなんとなく、元総大将の姿を脳裏に思い描いていた。
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