改札口の真正面で待ち構えていた小太郎に、高耶は驚いた顔をした。
「何だよ」
「ひどい雨でしたので」
迎えに参りました、と言うと、
「………そうか」
決して嬉しそうな顔はしないけど、機嫌はよさそうだ。
「で?」
「はい?」
「何でひとつしかねーんだよ」
高耶は小太郎の手元を指差した。
「カサ」
「……ああ」
言われてみれば小太郎は、自分が差してきた傘を持っているだけだ。
高耶の分がない。
これでは迎えに来た意味がないではないか。
思わぬ失態に言葉を失っていると、
「らしくねーな」
めずらしく、高耶が笑った。
「相合傘なんて、嫌だぜ?」
その笑顔に一瞬気を取られつつも、
「私は大丈夫ですから」
と、傘を差し出す。
「あなたが差してください」
「───……」
それに対して、高耶は首を横に振った。
そして、空を見上げて瞳を細める。
「いらない」
あれほどに激しかった雨も単なる夕立だったようで、空は明るさを
取り戻しつつある。
雨粒も小さくなってきた。
「雨に濡れるのが好きなんだ」
視線を、小太郎へと戻す。
「知ってるだろう?」
「……ええ」
小太郎は、直江の微笑みを作りながら答えた。
しかし何故か、心にちくりと小さな痛みを感じる。
(───?)
その痛みが、高耶の過去を知る直江への嫉妬心なのだとは、その時の
小太郎には知る術がなかった。
「何だよ」
「ひどい雨でしたので」
迎えに参りました、と言うと、
「………そうか」
決して嬉しそうな顔はしないけど、機嫌はよさそうだ。
「で?」
「はい?」
「何でひとつしかねーんだよ」
高耶は小太郎の手元を指差した。
「カサ」
「……ああ」
言われてみれば小太郎は、自分が差してきた傘を持っているだけだ。
高耶の分がない。
これでは迎えに来た意味がないではないか。
思わぬ失態に言葉を失っていると、
「らしくねーな」
めずらしく、高耶が笑った。
「相合傘なんて、嫌だぜ?」
その笑顔に一瞬気を取られつつも、
「私は大丈夫ですから」
と、傘を差し出す。
「あなたが差してください」
「───……」
それに対して、高耶は首を横に振った。
そして、空を見上げて瞳を細める。
「いらない」
あれほどに激しかった雨も単なる夕立だったようで、空は明るさを
取り戻しつつある。
雨粒も小さくなってきた。
「雨に濡れるのが好きなんだ」
視線を、小太郎へと戻す。
「知ってるだろう?」
「……ええ」
小太郎は、直江の微笑みを作りながら答えた。
しかし何故か、心にちくりと小さな痛みを感じる。
(───?)
その痛みが、高耶の過去を知る直江への嫉妬心なのだとは、その時の
小太郎には知る術がなかった。
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