「はい、おにーちゃん」
「サンキュ」
毎年恒例、美弥からの手作りチョコレートを受け取って、高耶は礼を言った。
昨晩、遅くまで台所でバタバタやっていたのを知っていたから、お疲れさま、とも言っ
てやる。
テーブルの上には同じ包みがもうひとつ。
「お父さんは帰ってきてから食べるって」
「ふうん。………じゃあ、あれは誰にだよ」
リビングのソファに置かれた美弥の通学カバンの横に、高耶が貰ったものよりひとまわ
り大きい、しかもかなり気合の入ったラッピングのものが置かれていた。
「へへ、内緒」
「オレもそっちがいいな」
「中身は一緒だもん」
美弥はそれを大事そうに鞄にしまうと、
「じゃあいってきます!」
と元気よく言って家を出て行った。
ひとりになった部屋で、高耶は小さくため息をつく。
美弥はもう、朝、遅刻するよと高耶を起こすことはしなくなった。
暗示がよく効いているらしく、この時間になっても高耶が登校の支度をしていないこと
に疑問すら抱かないようだ。
とはいえ、今日は別に調伏旅行へ行く予定がある訳ではない。
本来ならきちんと登校すべきなんだろうが、
(行く気がしない)
今更あの退屈な授業を受けて、何になるというのだろう。バレンタインではしゃぐクラ
スメイトたちと顔を合わせたところで、気まずいだけだ。
(ひとりでいるのが一番楽だ)
もう誰かの顔色を見て気を揉んだりするのは疲れた。
心の底からそう思った。
「サンキュ」
毎年恒例、美弥からの手作りチョコレートを受け取って、高耶は礼を言った。
昨晩、遅くまで台所でバタバタやっていたのを知っていたから、お疲れさま、とも言っ
てやる。
テーブルの上には同じ包みがもうひとつ。
「お父さんは帰ってきてから食べるって」
「ふうん。………じゃあ、あれは誰にだよ」
リビングのソファに置かれた美弥の通学カバンの横に、高耶が貰ったものよりひとまわ
り大きい、しかもかなり気合の入ったラッピングのものが置かれていた。
「へへ、内緒」
「オレもそっちがいいな」
「中身は一緒だもん」
美弥はそれを大事そうに鞄にしまうと、
「じゃあいってきます!」
と元気よく言って家を出て行った。
ひとりになった部屋で、高耶は小さくため息をつく。
美弥はもう、朝、遅刻するよと高耶を起こすことはしなくなった。
暗示がよく効いているらしく、この時間になっても高耶が登校の支度をしていないこと
に疑問すら抱かないようだ。
とはいえ、今日は別に調伏旅行へ行く予定がある訳ではない。
本来ならきちんと登校すべきなんだろうが、
(行く気がしない)
今更あの退屈な授業を受けて、何になるというのだろう。バレンタインではしゃぐクラ
スメイトたちと顔を合わせたところで、気まずいだけだ。
(ひとりでいるのが一番楽だ)
もう誰かの顔色を見て気を揉んだりするのは疲れた。
心の底からそう思った。
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