───雨は、誰の上にも平等に降る
いつだったか、彼が好きだと言った言葉は、自分の中にずっと残っていて、
雨が降る度に思い出される。
「……こと、───誠?」
「はい」
「どうした、何かみえるか」
辰美慶嗣こと里見義堯は、部下でもある開崎のことを下の名前で呼んだ。
「いえ、別に何も」
呼びなれない名で呼ばれて、すぐには返事ができなかった。
「そうか。また私にもみえぬものがみえるのかと思ったぞ」
義堯は嬉しそうに笑う。
「お前は霊査能力にも長けているからな。先週の除霊術も本当に見事だった」
義頼に、力試しだとかいって押しつけられた案件のことだ。
除霊ではなく浄霊だと心の中で訂正しながら、開崎はにこやかに頭を下げた。
「ありがとうございます」
「例の件も、これからが楽しみだ」
そこへ待っていたハイヤーが到着した。
義堯のためにドアを開けると、開崎にも前ではなく後ろに座れと言う。
信頼は、着実に得られているようだ。
反対側へとまわり込んで車へと乗り込む前に、もう一度空を見上げた。
眼鏡越しの空模様は、自分の目で見るのとはまた違って見える。
どこかできっと、彼もこの空を見上げているに違いない。
そのわずかな繋がりを心の中へ大切にしまいこむと、開崎は後部座席のドアを
開けて車へ乗り込んだ。
いつだったか、彼が好きだと言った言葉は、自分の中にずっと残っていて、
雨が降る度に思い出される。
「……こと、───誠?」
「はい」
「どうした、何かみえるか」
辰美慶嗣こと里見義堯は、部下でもある開崎のことを下の名前で呼んだ。
「いえ、別に何も」
呼びなれない名で呼ばれて、すぐには返事ができなかった。
「そうか。また私にもみえぬものがみえるのかと思ったぞ」
義堯は嬉しそうに笑う。
「お前は霊査能力にも長けているからな。先週の除霊術も本当に見事だった」
義頼に、力試しだとかいって押しつけられた案件のことだ。
除霊ではなく浄霊だと心の中で訂正しながら、開崎はにこやかに頭を下げた。
「ありがとうございます」
「例の件も、これからが楽しみだ」
そこへ待っていたハイヤーが到着した。
義堯のためにドアを開けると、開崎にも前ではなく後ろに座れと言う。
信頼は、着実に得られているようだ。
反対側へとまわり込んで車へと乗り込む前に、もう一度空を見上げた。
眼鏡越しの空模様は、自分の目で見るのとはまた違って見える。
どこかできっと、彼もこの空を見上げているに違いない。
そのわずかな繋がりを心の中へ大切にしまいこむと、開崎は後部座席のドアを
開けて車へ乗り込んだ。
PR