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『 二十三日 1/3 』≪≪    ≫≫『 雨 2/3 』   
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───雨は、誰の上にも平等に降る

 いつだったか、彼が好きだと言った言葉は、自分の中にずっと残っていて、
雨が降る度に思い出される。
「……こと、───誠?」
「はい」
「どうした、何かみえるか」
 辰美慶嗣こと里見義堯は、部下でもある開崎のことを下の名前で呼んだ。
「いえ、別に何も」
 呼びなれない名で呼ばれて、すぐには返事ができなかった。
「そうか。また私にもみえぬものがみえるのかと思ったぞ」
 義堯は嬉しそうに笑う。
「お前は霊査能力にも長けているからな。先週の除霊術も本当に見事だった」
 義頼に、力試しだとかいって押しつけられた案件のことだ。
 除霊ではなく浄霊だと心の中で訂正しながら、開崎はにこやかに頭を下げた。
「ありがとうございます」
「例の件も、これからが楽しみだ」
 そこへ待っていたハイヤーが到着した。
 義堯のためにドアを開けると、開崎にも前ではなく後ろに座れと言う。
 信頼は、着実に得られているようだ。
 反対側へとまわり込んで車へと乗り込む前に、もう一度空を見上げた。
 眼鏡越しの空模様は、自分の目で見るのとはまた違って見える。
 どこかできっと、彼もこの空を見上げているに違いない。
 そのわずかな繋がりを心の中へ大切にしまいこむと、開崎は後部座席のドアを
開けて車へ乗り込んだ。
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