江戸の春は早い。
元旦を過ぎてしばらく経てば、世間はもう浮き足立ってくる。
「最近、めっきり暖かいわねっ」
恋人に先立たれ、一時期連絡を絶っていた晴家だったが、近頃また復活した。
文字通り、復活だ。
「お団子の美味しい季節が来るわっ!」
女言葉はすっかり板についた晴家だったが、時折粗野さが表に出てしまう。
拳を振り上げて片足を目前の岩に乗せたものだから、着物の裾から脚が露になった。
ひどい恰好をたしなめながら、直江は問いかける。
「団子?」
「花見よ、花見!」
「ああ……」
さすがにまだ早い気がしたが、酔って暴れる晴家の姿は容易に想像出来た。
「………あまり羽目は外さぬようにな」
ため息とともにそう言うと、晴家は直江の顔を覗き込んできた。
「あんたこそ、一緒に行くひとくらいはいるの?」
つまり、いい仲のひとがいるのかと訊いているのだ。
「…………」
直江は、一瞬だけ脳裏に描いたひとの姿を、すぐに打ち消した。
元旦を過ぎてしばらく経てば、世間はもう浮き足立ってくる。
「最近、めっきり暖かいわねっ」
恋人に先立たれ、一時期連絡を絶っていた晴家だったが、近頃また復活した。
文字通り、復活だ。
「お団子の美味しい季節が来るわっ!」
女言葉はすっかり板についた晴家だったが、時折粗野さが表に出てしまう。
拳を振り上げて片足を目前の岩に乗せたものだから、着物の裾から脚が露になった。
ひどい恰好をたしなめながら、直江は問いかける。
「団子?」
「花見よ、花見!」
「ああ……」
さすがにまだ早い気がしたが、酔って暴れる晴家の姿は容易に想像出来た。
「………あまり羽目は外さぬようにな」
ため息とともにそう言うと、晴家は直江の顔を覗き込んできた。
「あんたこそ、一緒に行くひとくらいはいるの?」
つまり、いい仲のひとがいるのかと訊いているのだ。
「…………」
直江は、一瞬だけ脳裏に描いたひとの姿を、すぐに打ち消した。
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